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 作品について 

 

 

 

 私は主に2つの作品シリーズ(仮にシリーズ AB とします)を同時に制作しています。

シリーズ A において、私は実在しない架空のモニュメントを創造し、記号化して空想上の地図に

描き込みます。(ここで言うモニュメントとは記念碑や慰霊碑だけでなく、宗教建築やランドマーク、塔、歴史的建造物の一部分なども含みます。)私はモニュメントとは「集合的記憶の保管庫」あるいは「共同体意識の形成・維持を目的とした装置」であると捉えています。建立者側のプロパガンダの道具ともなりえるモニュメントというメディアは、ときにパラダイムシフトの心理的障害となり、長年に

わたって社会的影響力を持ち続けます。私は画面上にモニュメントを配置するとき、下地として描かれた地形図や他の記号との位置関係、更には偶然の要素も考慮してその位置を決定します。つまり、架空の歴史を想定しつつ絵画制作を進めることで、モニュメントの不可逆的なたらきを再演しています。

これにより人々の信念に恣意的選択があることを表現しています。

 一度描かれた記号の位置の絵画的(構図的)妥当性を、描かれる以前に立ち戻って考えることの

難しさは「歴史を評価することの難しさ」のミニチュアであり、その意味でシリーズ A の制作作業

そのものが『架空の文化史のシミュレーション』なのです。



 シリーズ B の主題は『人類が発見・解明するかも知れない未知なる現象の模式図』です。ここでは、ある1つの事象の2つの場面が、左右のサブフレーム内に描かれ、左右図の違いによって何らかのプロセスが暗示されています。つまり今はまだメカニズムが未解明の現象を、直接画面に描くことなく描いているのです。左右2つのイメージの差異に内在する視点の飛躍や断絶は、視覚化やモデル化が難しい様々な質的・構造的変化(パラダイムシフト、ブレイクスルー、禅の悟り、発想の転換、啓示

直感、等々…)を表すためのものです。  

 並置された2つの抽象的イメージに前後/主従関係は無く、鑑賞者の各々の脳が任意に察知・想定した『関係』こそが私の作品そのものであると言えます。そして、このコンセプトは映像作品などの時間芸術ではなく、絵画メディアだからこそ成り立つ/際立つものと考えます。

 


 作品シリーズ AB の関係は、精神⇔物質、宗教⇔科学、文 (系) ⇔理 (系) 、マクロ⇔ミクロ、

過去⇔未来、歴史的⇔瞬間的、などの関係を象徴しています。両シリーズの並行制作の背後には

「両方を統合した視点を持ちたい」「その交差地点に立っていたい」という考えがあります。私は

常に「2つの領域の接点や境界」「両極端なものの交わり」「表裏一体なもの」に惹かれるのです。 

 さらに、この並行制作は、私が活動初期の作品シリーズ(2枚1組のモノクローム絵画)で表現していた相対性や相補性、不可知性を、全く異なる次元と方法で再出現させたものでもあります。